シリーズ「撮影ディレクションとは何か ─ 失敗しない撮影の考え方」の最終回です。

これまで4回にわたって、撮影ディレクションとは何か、なぜ「思っていたものと違う」が起きるのか、専属で続ける意味、撮影前に考えておきたい3つのこと ── をお伝えしてきました。最終回は、シリーズ全体を貫いてきた一つの考え方を、改めてお伝えします。

それは ── 「単発でも十分に、継続でより良く」です。

単発でも、ちゃんと届く

まず、はっきりお伝えしておきたいことがあります。撮影は、単発の依頼でも十分に良い結果になります。

一度きりの撮影でも、事前に目的を擦り合わせ、伝えたいことを翻訳して撮影すれば、納得のいくものが仕上がります。これまでのシリーズでお伝えしてきたディレクションの考え方は、単発の撮影にもそのまま活きます。「継続しないと意味がない」ということは、まったくありません。一度の撮影を、しっかり成功させることはできます。

そのうえで ── 撮影には、一度きりでは届きにくい領域がある、というのが今回のお話です。

一度では伝えきれないものがある

シリーズ第2回で、撮影は「人対人の翻訳作業」だとお伝えしました。会社が伝えたいことを、撮影の言葉に翻訳する。この翻訳は、初回からある程度はうまくいきます。けれど、一度の打ち合わせと一度の撮影だけでは、伝えきれないものが必ず残ります。

たとえば、自社の空気感。言葉にしにくい「うちらしさ」。撮ってみて初めて気づく「ここはもう少しこうしたい」という感覚。こうしたものは、一度のやりとりでは出しきれません。実際に撮影を一度経験して、仕上がったものを見て、はじめて「次はこうしたい」が見えてきます。

WHAT TAKES TIME

会社の「らしさ」や、担当者の好みの細かなニュアンスは、一度の撮影で完全に伝えきれるものではありません。継続とは、その伝えきれなかった部分を、回を重ねて埋めていく時間です。

撮影は「打ち合わせ」と「現場」の2段階で良くなる

では、その「次はこうしたい」は、どこで生まれるのでしょうか。ここで大切になるのが、撮影は2つの段階で良くなっていくという考え方です。

1つ目の段階は、撮影前の打ち合わせ。ここで目的や方向を擦り合わせます。2つ目の段階は、撮影当日の現場です。打ち合わせでどれだけ方向を決めても、実際の現場では「もう少しこういう雰囲気に」という細かな判断がいくつも生まれます。この現場での気づきこそが、次回への改善の出発点になります。

だからこそ、撮影当日には、できるだけ担当者に立ち会っていただくことをおすすめしています。現場で仕上がりを一緒に見ていただくと、その場での調整ができるだけでなく、「次はこうしたい」という次回への要望が自然に生まれます。立ち会いが難しいこともあると思いますが、可能な範囲で現場に入っていただくことが、撮影を続けて良くしていくための、大切な一歩になります。

単発の撮影は、その一度を成功させるもの。継続の撮影は、回を重ねるごとに「らしさ」が深まっていくもの。単発でも十分に、継続でより良く ── これが、SIGNAL FORWARDが大切にしている撮影の考え方です。

シリーズのおわりに

全5回にわたって、「撮影ディレクションとは何か」をお伝えしてきました。

撮影ディレクションとは、特別な演出を加えることではありません。何を撮るべきか、どう進めれば負担が少ないか、撮った素材をどう活かすか ── それを撮影の前から一緒に整理し、写真や動画というかたちに翻訳していく仕事です。そして、それは一度きりでも、続けることでも、それぞれの良さがあります。

SIGNAL FORWARDは、写真・動画・ディレクションを一人で担っています。だからこそ、設計と現場が分断されず、続けるほどに会社の専属パートナーとして機能していきます。撮影を考え始めたとき、「何から相談すればいいか分からない」段階でも構いません。その整理から、一緒に始められます。