シリーズ「撮影ディレクションとは何か ─ 失敗しない撮影の考え方」の第3回。

ここまで、撮影ディレクションとは何か(第1回)、なぜ「思っていたものと違う」が起きるのか(第2回)をお伝えしてきました。今回は、撮影を依頼する「相手の選び方」によって、ディレクションの効き方がどう変わるのかを取り上げます。

具体的には ── 毎回違うカメラマンに頼む撮影と、同じ人が継続して関わる専属の撮影。この2つの違いです。

「誰が来るか」は、意外と見えていない

撮影を外注するとき、多くの企業はサービスやプラン、料金を比較します。けれど、見落とされがちな点があります。それは「実際に、誰が撮影に来るのか」です。

撮影マッチングサービスや、制作会社経由の撮影では、回ごとに違うカメラマンが派遣されることが珍しくありません。1回目と2回目で別の人が来る。担当者からすれば「同じ会社に頼んだ」つもりでも、現場に立つ人は毎回変わっている ── これは、よくあることです。

A HIDDEN DIFFERENCE

サービス名や料金は比較できても、「次も同じ人が来るかどうか」は、契約の段階では見えにくい部分です。けれど、撮影の質を長い目で見たとき、この違いはとても大きな意味を持ちます。

毎回違う人だと、何が起きるのか

第2回で、撮影は「人対人の翻訳作業」だとお伝えしました。担当者が伝えたいことを聞き取り、それを撮影の言葉に翻訳する ── その積み重ねが、良い撮影をつくります。

ところが、毎回違うカメラマンが来ると、この積み重ねが成立しません。前回の撮影で交わした擦り合わせも、つかんだ会社の雰囲気も、新しいカメラマンには引き継がれないからです。担当者は毎回、自社のことを一から説明することになります。会社の理解は、回を重ねても深まらず、毎回ゼロからのスタートを繰り返します。

もちろん、一回ごとの撮影はそれぞれ成立します。けれど、「前回ここが少し物足りなかったから、今回はこうしたい」という改善が積み上がっていきません。撮影が、毎回「初めまして」のままなのです。

専属だと、撮影は「育って」いく

一方、同じ人が継続して関わる専属の撮影では、まったく違うことが起きます。

2回目には、カメラマンはすでに会社の雰囲気を知っています。どんな社員がいて、どんな空気の職場で、担当者が何を大切にしているか ── それが分かったうえで撮影に臨めます。前回の手応えや、少し物足りなかった点を、次回に活かせる。回を重ねるごとに、撮影の精度は自然に上がっていきます。

これは、撮影ディレクションが本領を発揮する条件でもあります。ディレクションは「会社の価値を撮影に翻訳する仕事」ですが、その翻訳は、会社を深く知っているほど正確になります。継続は、翻訳の精度を上げる時間なのです。

毎回違うカメラマンの撮影は、何度頼んでも「1回目」のまま。専属の撮影は、回を重ねるごとに会社の理解が積み重なる。同じ「撮影を頼む」でも、続いた先にあるものは、まったく違います。

単発でも、もちろん大丈夫

ここまで読むと「継続しないと意味がないのか」と感じるかもしれませんが、そうではありません。

単発の撮影でも、ディレクションが入れば十分に応えられる結果になります。一度の撮影でも、事前に目的を擦り合わせ、意図を翻訳して撮影すれば、納得のいくものになります。継続は「さらに良くするための選択肢」であって、単発がだめということでは決してありません。

SIGNAL FORWARDが写真・動画・ディレクションを一人で担っているのは、この「継続できる体制」を持つためです。次に依頼するときも、同じ人間が、前回の続きから撮影できる。誰が来るか分からない不安がなく、回を重ねるほど会社の専属パートナーとして機能していきます。

次回は、撮影を依頼する企業の担当者が、撮影前に考えておきたいことを取り上げます。準備というと身構えてしまうかもしれませんが、必要なのはほんの数つの問いに向き合うことだけです。