シリーズ「撮影ディレクションとは何か ─ 失敗しない撮影の考え方」の第4回。
これまで、撮影ディレクションとは何か、なぜ「思っていたものと違う」が起きるのか、専属で撮影を続ける意味 ── を順にお伝えしてきました。今回は視点を変えて、撮影を依頼する企業の担当者の側にスポットを当てます。
「撮影には準備が必要」とよく言われます。では、担当者は具体的に何を準備すればいいのか。実は、考えておきたいことは、たった3つです。
準備は「完璧」でなくていい
まず、お伝えしておきたいことがあります。撮影前の準備というと、資料を作り込んだり、細かい指示書を用意したりと、身構えてしまう方がいます。でも、そこまでの準備は必要ありません。
大切なのは、立派な資料ではなく、撮影の「方向」を担当者自身がぼんやりとでもつかんでいることです。そして、その方向は、3つの問いに向き合うだけで見えてきます。
その撮影は、何を達成するためのものか。採用を強化したいのか、社内に向けた広報なのか、会社の認知を広げたいのか。目的が違えば、撮るべきものも変わります。「採用サイトに載せる写真が必要だから」だけでなく、その一歩奥 ──「その写真で、どんな採用にしたいのか」まで考えられると、撮影は大きく変わります。
その写真や動画を、誰に見てほしいのか。新卒の学生なのか、中途採用の経験者なのか、エンジニアなのか。届けたい相手がはっきりすると、見せるべき中身も決まります。若手に向けるなら職場の空気感や人間関係、経験者に向けるなら仕事の裁量や事業の安定感 ── 相手によって、響くものは違います。
見た人に、自社をどう感じてほしいか。「誠実そう」「活気がある」「落ち着いていて安心できる」── 言葉はざっくりで構いません。この印象のイメージが、写真のトーンや、撮るべき表情、選ぶ場所を決める手がかりになります。
「何のために」「誰に」「どんな印象を」。この3つにぼんやりとでも答えられれば、撮影の準備はもう半分以上できています。完璧な資料より、この3つの方向感のほうが、ずっと大切です。
3つの問いも、一人で答えを出さなくていい
ここまで読んで、「3つとはいえ、自社のことをうまく言葉にできるだろうか」と感じた方もいるかもしれません。その不安も、当然のものです。
自社の価値や伝えたい印象を、きれいに言語化するのは、撮影に不慣れな担当者にとって簡単なことではありません。そして、それを一人でやり切る必要はありません。
第1回でお伝えしたとおり、撮影ディレクションの仕事には「目的の整理」「届けたい相手の見極め」が含まれます。つまり、この3つの問いに答えを出す作業そのものを、撮影のプロと一緒に進められるということです。担当者は「正解」を用意して臨む必要はなく、「こうしたい」というぼんやりした思いを持って打ち合わせに来ていただければ、そこから一緒に整理していけます。
SIGNAL FORWARDでは、撮影の打ち合わせを「指示を受け取る場」ではなく「一緒に考える場」と位置づけています。準備が整っていない状態からのご相談でも、まったく問題ありません。むしろ、整理されていない段階で相談いただくほうが、撮影の方向を一緒に作っていけます。
次回はシリーズの最終回。撮影は「続けるほど良くなる」── 一度きりでは届かない領域について、そして立ち会いの意味についてお伝えします。
