「苦手」の一言に、2種類が混ざっている
採用サイトや会社案内の撮影では、担当者の方が事前に被写体となる社員の方を選びます。このときの選び方で、当日の撮れ高がほとんど決まると言っていいほどです。
そして現場でよく起きるのが、撮影が始まってから「実はこの人、写真が苦手なんです」と打ち明けられるという場面です。
ここで大事なのは、その「苦手」がどちらなのかを見ることです。
- カメラが苦手=慣れていない。どう立てばいいか、どこを見ればいいかが分からない
- 撮られるのが嫌い=自分の姿が記録され、人に見られること自体を望んでいない
前者は技術と時間で解けます。後者は、どれだけ撮影が上手くいっても解けません。まったく別の話なのに、社内では同じ「写真が苦手な人」として扱われてしまいます。
「カメラが苦手」は、撮影中にほどけていく
慣れていないだけの方は、心配いりません。本人が「自分は写真写りが悪い」と思い込んでいるだけ、というケースがとても多いからです。
SIGNAL FORWARDの撮影では、こうした方に対して最初の数分を、これからどんな撮影をするのかをご説明しながら、コミュニケーションを取る時間にしています。いきなりカメラを向けることはありません。何をされるか分からない状態が、いちばん緊張を強めます。 先に流れをお伝えしておくだけで、表情はずいぶん変わります。
手を動かしてもらう
何もない状態で立ってもらうと、手の置き場所に困ります。資料を持つ、パソコンに向かう、道具に触れる。体に役割を与えると、それだけで表情が落ち着きます。「自然に笑ってください」と言うより、はるかに効きます。
話しながら撮る
撮影中は、仕事の話を伺いながらシャッターを切ります。人は、自分の仕事の話をしているときがいちばん良い顔をします。カメラを意識している時間を、できるだけ短くするための進め方です。
最初の1枚を見せない
撮った直後に画面を見せると、多くの方が自分の粗探しを始めます。撮影が終盤に入り、良いカットが撮れてから確認していただく。順番の問題です。
そもそも、撮られるという経験は日常にほとんどありません。被写体になる方のほとんどは、撮られること自体が初めてです。緊張されるのは、当たり前のことだと思っています。苦手意識のほとんどは、この撮られ慣れていないことから来ています。 慣れるまでの時間は人それぞれで、5分で解ける方もいれば、30分かかる方もいます。ただ、その壁が取れると、こちらが何も言わなくても自然と笑顔でいてくださるようになります。だからこの種の「苦手」は、人選から外す理由にはなりません。
「撮られるのが嫌い」は、慣れでは解けない
問題はこちらです。
自分の顔が採用サイトやSNSに出ること自体に抵抗がある方は、一定数いらっしゃいます。理由はさまざまです。前職との関係、家庭の事情、単純に人前に出たくないという気質。どれも、こちらが立ち入るべきことではありません。
この方を「慣れれば大丈夫だろう」と考えて撮影に出すと、当日にこうなります。
- 表情が最後まで固い。何枚撮っても使えるカットが出ない
- 周囲の社員の方にも気を遣わせ、現場全体の空気が重くなる
- 公開後に「やっぱり外してほしい」と申し出があり、差し替えになる
いちばん避けたいのは3つ目です。撮影も、サイトへの掲載も、差し替えも、すべてやり直しになります。 時間も費用も、二重にかかります。
そして何より、その社員の方に、要らない負担をかけてしまいます。採用のための素材を撮った結果、社内の関係がぎくしゃくしては本末転倒です。
見分け方:事前に、1つだけ聞いておく
難しいことは必要ありません。人選の段階で、候補の方にこう聞いていただくだけです。
「撮った写真は、採用サイトや会社のSNSなど、社外の人が見る場所に載ります。それは大丈夫でしょうか」
ポイントは、「写真、撮られるの平気?」と聞かないことです。そう聞かれると、多くの方は「まあ、大丈夫です」と答えてしまいます。その場で断るのは、気まずいからです。
聞くべきなのは撮影の可否ではなく、公開されることへの意思です。使われ方を具体的に伝えると、答えが変わります。
ここで少しでも言いよどむ方がいたら、その反応を尊重していただきたいと思っています。無理に出していただく必要は、本当にありません。
撮られ慣れている人がいるなら、その人を優先する
ここまで「苦手な人をどうするか」の話をしてきましたが、人選にはもうひとつ、見落とされやすい視点があります。
社内には、撮られることに抵抗がない方、むしろ撮られ慣れている方が一定数いらっしゃいます。営業で人前に立つ機会が多い方、社内イベントで司会をされている方、前職で取材を受けた経験のある方。そうした方がいるなら、まずその方を優先して選んでいただくのが、いちばん確実です。
理由は2つあります。ひとつは、撮影の立ち上がりが速いこと。慣れている方から撮り始めると、その場の空気が先にほぐれます。同じ空間にいる他の社員の方も「こういう感じでいいのか」と分かるため、後に続く方の緊張が軽くなります。
もうひとつは、限られた撮影時間を、確実に使えることです。半日の撮影で回れる人数には限りがあります。慣れている方を先に押さえておけば、使えるカットが確保された状態で、苦手な方にゆっくり時間をかけられます。
① 撮られ慣れている方 → ② 慣れていないが公開に問題のない方 → ③ 公開に抵抗のある方は無理に出さない。 この順番で組んでいただくと、当日が驚くほどスムーズになります。
2回目からは、被写体の方が提案してくれる
撮影の現場では、すでに採用撮影を経験されている方に出会うことがよくあります。そうした方は、ご自身がどう撮られると良いかを、すでに分かっていらっしゃいます。
「こんなポーズはどうですか」「仕事風景なら、こういう場面がありますよ」。こちらが聞く前に、向こうから出てきます。 これが経験の差です。
誤解のないように申し添えますと、撮影未経験だから良くない、という話では一切ありません。 あくまで未経験なだけで、時間をかけて進めれば、撮影の流れはその日のうちに分かっていただけます。
そのうえで、毎年同じ方を撮らせていただくと、表情だけでなく「提案の中身」が変わってきます。より良い表情が出るようになり、より具体的な仕事の場面を挙げてくださるようになります。
この「具体的な仕事の場面」は、本人にしか出せません。 カメラマンにも、採用担当者にも、その部署の日常の細かいところまでは分かりません。本人が挙げてくださる場面が写真に入ると、仕事の中身が、求職者に正確に伝わります。入社後の「聞いていた話と違った」というミスマッチを減らすうえで、これはとても大きいと感じています。
つまり、同じ方を継続して撮らせていただくと、写真の見た目の質と、伝わる仕事内容の質が、どちらも上がっていきます。人選を毎回ゼロから考え直すより、「去年も出てくれた方に、今年もお願いする」という選び方の方が、結果的に良い素材になることが少なくありません。
関連して、入社後のギャップについては入社後の「こんなはずじゃなかった」をゼロに。写真で伝える「働く温度感」と納得感でも触れています。あわせてご覧ください。
顔を出さなくても、会社の空気は撮れる
「でも、あの部署はあの人しかいないんです」というご相談もよくいただきます。
そのときは、顔を写さずに成立させます。採用素材として使えるカットは、正面からの顔写真だけではありません。
- 手元:作業している手、キーボード、道具を扱う指先
- 後ろ姿・横顔:同僚と話している場面を、少し離れた位置から
- 引きの画:人が小さく写る構図。職場の広さや雰囲気が伝わる
- 背中越し:本人の視界に近い角度。何を見て仕事をしているかが分かる
こうしたカットを組み合わせると、顔が写っていなくても「ここで働いている人がいる」ことは十分に伝わります。フリー素材との決定的な違いは、そこに実在する職場が写っていることです。
ただし、これは撮影の前に決まっていないと撮れません。当日に急遽「顔なしで」となると、構図も光の作り方も変わるため、その場の判断だけでは足りなくなります。だからこそ、人選は企画の段階で固めておく必要があります。
まとめ:人選は、当日ではなく企画の段階で決まる
整理いたします。
- 「写真が苦手」には慣れの問題と、価値観の問題が混ざっている
- 慣れの問題は撮影中にほどける。人選から外す理由にはならない
- 公開されること自体への抵抗は慣れでは解けない。無理に出さない
- 見分けるには「社外の人が見る場所に載ります」と具体的に伝えて反応を見る
- 撮られ慣れている方から先に撮る。場がほぐれ、後の方の緊張が軽くなる
- 同じ方を継続して撮ると、表情も、提案される仕事の場面も質が上がる
- 出せない方がいても、手元・後ろ姿・引きの画で成立させられる
撮影当日にできることは、思っているより限られています。逆に言えば、人選の段階で手を打っておけば、当日の失敗はほとんど防げます。
誰を出すか迷われている段階でも、お声がけください。どう撮るかの前に、誰を、どう写すか。SIGNAL FORWARDでは、そこからご一緒させていただいています。